トランジット(経緯儀) 撮影協力:株式会社ナノテック
■指定されている場所: 板橋区
板橋区の戦前の工業といえば、双眼鏡をはじめとする光学産業でした。戦前は軍事目的の光学機器の生産が盛んに行われ、「光学の板橋」と呼ばれるほどになりました。戦後の復興期、板橋区の光学産業、そしてその技術を引き継いだ計測・検査機器の生産を支えたのは、戦前の軍需工場で働いていた技術者たちでした。
明治・大正時代に、双眼鏡は一般には普及せず、もっぱら軍隊が使用していました。明治時代はドイツからの輸入に頼っていましたが、1911(明治44)、藤井レンズ製造所によって国産第一号の双眼鏡が発売されました。やがて藤井レンズ製造所等を母体にして、日本光学工業株式会社(現在のニコン)が設立されます。日本光学は主として海軍向けの光学機器を製造しました。一方、陸軍において光学機器が供給不足となったため、服部時計店精工舎の下請け工場であった勝間光学機械製作所を母体にして、1932(昭和7)年、東京光学機械株式会社(現在のトプコン)が上池袋に設立されました。そして翌年、本社工場が板橋区に移転しました。
レンジファインダー(距離計)
画像提供:株式会社ナノテック
板橋区には、現在に至るまで、光学に関係する様々な企業が集積しており、大手メーカーはもとより、中小企業の中にも、最先端技術を担い、特定の分野で世界のシェアを独占している会社もあります。板橋の光学技術はカメラ技術や計測技術のみならず医療分野や、環境や生物、生命工学、さらには宇宙開発の分野に関係する製品造りに発展しています。板橋区では、計測・精密機器メーカーを含む光学関連企業に対しても、種々の支援を実施しています。板橋産業技術支援センターでは、企業が最新型の精密測定・耐久試験・成分分析などを行うために、計測検査機器を利用することができます。さらに板橋区では、ものづくりの支援として「製品技術大賞」という賞が設けられており、新たな技術開発にチャレンジする企業の励みとなっています。
デジタルマイクロスコープ
撮影協力:板橋産業技術支援センター
測定顕微鏡(高精度寸法測定)
撮影協力:板橋産業技術支援センター