大堂(祖師堂)
■指定されている場所: 大田区
池上本門寺(いけがみほんもんじ)は、700 年以上の歴史を持つ日蓮宗の大本山です。境内には国や東京都、また大田区の文化財に指定された建築物や旧跡が多数あり、歴史的遺産の宝庫といえます。
日蓮宗の宗祖・日蓮は、1282(弘安5)年、武蔵国池上(現在の東京都大田区池上)の郷主・池上宗仲の屋敷で亡くなりました。宗仲は、自らの土地の一部(約7 万坪)を寄進し、そこに創設されたのが池上本門寺です。ありし日の日蓮の姿を彫った木造日蓮聖人坐像(国の重要文化財)が、大堂(祖師堂)に安置されています。また、毎年10 月11 日から、日蓮の命日にあたる10 月13 日まで行われる「お会式(おえしき)」は、池上本門寺最大の行事であり、約30 万人の参拝者が本門寺を訪れます。約3000 人の万灯練行列(まんどうねりぎょうれつ)が町を練り歩きます。
五重塔と桜
梵鐘
1647(正保4)年、加藤清正の娘で、紀州徳川家の祖徳川頼宣(よりのぶ)の正室・瑤林院(ようりんいん)が鐘楼の梵鐘(ぼんしょう)を寄進しました(国の重要文化財)。1714(正徳4)年、紀州の鋳物師(いもじ)・木村将監藤原安成が改鋳しましたが、最初の梵鐘にあった銘文が再び刻まれました。現在は鐘楼のわきに置かれています。瑤林院は、池上本門寺に加藤清正供養塔(大田区指定有形文化財)も建立しています。ちなみに、池上本門寺は、江戸における紀州徳川家の菩提寺でした。
宝塔
池上本門寺宝塔は、日蓮の荼毘所(だびしょ)跡とされる場所に建てられた木造の仏塔です。内部に空間がある宝塔は国内ではまれで、宝塔形式の塔としては最大級のものです。1828(文政11) 年に建立され、現在、国の重要文化財に指定されています。
1784(天明4)年に建てられた経蔵は、輪蔵形式で、内部には回転する八角形の書架があり、一切経が収められていました。経蔵は、大田区の有形文化財に指定されています。
松濤園内の「南洲海舟評議の処」の碑
(東京都指定旧跡)
小堀遠州作と伝えられる回遊式庭園の松涛園(しょうとうえん)は、単に美しい庭園というだけでなく、重要な史跡でもあります。1868(慶応4)年、幕臣・勝海舟と東征軍参謀・西郷隆盛が江戸城明け渡しのための会見を行ないました。この時の話し合いによって、武力衝突は回避され、江戸城は無血開城しました。池上本門寺には他にも、『兄弟抄』(日蓮筆・国指定重要文化財)や、「日蓮筆大曼荼羅」(東京都指定文化財)その他多数の有形文化財が所蔵されています。それらは主に、 池上本門寺の霊宝堂に収納・展示されています。
写真提供:池上本門寺