■指定されている場所:八丈町
島寿司とは、伊豆諸島で獲れる魚をネタにして、「ヅケ」と呼ばれる醤油漬けにした寿司のこと。ネタとなる魚は、メダイ、キンメダイ、ハマトビウオ、シマアジ、カンパチ、マグロ、カツオなど、その時期に水揚げされる魚を用いるため、種類は様々です。日持ちを良くするため、寿司飯はやや甘めの酢飯を使用し、ネタも濃い目に調理されています。
メダイ
キンメダイ
寿司といえば、普通ワサビを用いますが、伊豆諸島や小笠原諸島ではかつてはワサビが自由に手に入らなかったため、代わりに練りがらしを使いました。また、醤油に「青とう」と呼ばれる島トウガラシの熟していない実を漬け込んで辛くした「島とう醤油」を使用したり、もしくはその場で刻んだ「青とう」を醤油に混ぜたものを用いることもあります。
春トビ(ハマトビウオ)
古来、八丈島では2月3日の節分の日に、島の言葉でいう「春トビ」、つまりハマトビウオ(Cypselurus pinnatibarbatus japonicus)で握った「島寿司」を食べる習慣がありました。春トビの初水揚げは島に春を伝える役割を担っており、八丈島ではハマトビウオのことを「春告魚(はるつげうお)」と呼んできました。日本各地では、それぞれ異なる魚が春告魚とされてきました。小笠原諸島では、サワラ、厳密にはカマスサワラ(Acanthocybium solandri)が「春告魚」とされ、島寿司のネタとして愛用されてきました。ちなみに、サワラは、漢字で「鰆」と書きます。
島寿司にはしばしば、伊豆諸島で採れた「島のり(岩のり)」の佃煮の握りが、1人前につき1つか2つ添えられています。磯の香りや風味が食欲をそそります。
八丈島では、島内の寿司店「銀八」や「あそこ寿司」で、また割烹料理店「宝亭」や八丈島空港内のレストラン「アカコッコ」で食べることができます。また八丈島のホテルや民宿のメニューとしても定番です。さらに島内のスーパーでも販売されています。さらに、八丈島空港内の売店でも寿司折として人気のお土産となっています。
島寿司は、八丈島だけでなく、伊豆諸島の他の島々や小笠原諸島でも作られています。また明治時代に八丈島からの開拓団が入植した沖縄・大東諸島の「大東寿司」も八丈島から伝わったものです。醤油に漬けたネタが、ツヤツヤとしたきれいな飴色(あめいろ)になることから、伊豆大島では「鼈甲(べっこう)鮨」とも呼ばれています(鼈甲とは、海ガメの一種タイマイの甲羅を加工して作った装飾品のこと)。ちなみに、伊豆諸島・小笠原諸島の玄関口である竹芝客船ターミナル内にオープンした、創作料理レストラン「鼈甲鮨 BEKKOUZUSHI」では、本州にいながら鼈甲鮨を食べることができます。