ふれあい牧場
■指定されている場所:八丈町
「八丈富士」は、美しい円錐形をした標高854mの八丈島最高峰であり、伊豆諸島の中で最も高い山です。ひょうたんの形をした八丈島の北西側に位置する山なので、「西山」とも呼ばれています。
八丈島空港から、八丈空港道路の「富士登山道入口」交差点を経て「富士山縦断路」を登っていくと、周回道路の「鉢巻道路」に出ます。ここまでの片道所要時間は徒歩で約2時間30分(上り)、車で約20分です。鉢巻道路は八丈富士の七合目付近をぐるりと一周しており、「ふれあい牧場」にも通じています。鉢巻道路にある「登山口」(標高535m)から上へは徒歩のみです。1280段の石段からなる高低差約300mの道を登り切ると、火口外縁の「お鉢巡りの分岐点」に到着します。八丈富士の火口の直径は400m、深さ50mで、火口底にはこんもりと盛り上がった「中央火口丘」があり、ジャングルのような深い森に覆われていて幾つかの池が点在します。八丈富士からは条件が良ければ88km北にある御蔵島が、さらに好条件の時には263km北にある富士山の頂上だけが海面上に見えます。
お鉢巡り
「お鉢巡りの分岐点」から火口丘を一周する約1.6kmの「お鉢巡り」を回る場合、軽登山用の靴かスニーカーが必要になります。コースのところどころにあるガレ場(大小の石が不安定に積み重なっている場所)では、大股で歩かず注意しながら進みましょう。お鉢巡りは、強風や濃霧時は転落の危険があるので中止してください。
お鉢巡り
「お鉢巡りの分岐点」から火口へ降りていくと、まるで四方を高い城壁に囲まれたような外世界と隔絶された別世界に入り込みます。火口の中は特別保護地区に指定されており、たき火や動物の捕獲、落ち葉の採取なども規制されています。
火口内からの眺め
約10分歩くと、小さな祠と鳥居のある「浅間(せんげん)神社」に到着します。祠に丸い石が多数積まれているのは、昔、元服した若者が玉石を運んでここに供える風習があったためです。浅間神社の奥には、火口底よりもさらに断崖のように深くなった「中央火口」(通称「小穴」)があり、ヤマグルマ(別名トリモチノキ)の純林が広がっています。
八丈富士の南側の中腹には、黒毛和牛が放牧されている「ふれあい牧場」があります。のんびりと草をはむ牛たちを間近で観察することができます。また、牧場の展望台からは、三原山や八丈島の市街地、空港が一望できます。八丈富士の西側の中腹には、八丈小島を眺めることができる「八丈小島展望台」があり、夕日や星空観察のお勧めスポットです。
火口跡のカルデラ
約10万年前から始まった一連の噴火によってできた三原山(東山)と比べれば、八丈富士は約1万数千年前の海中噴火によって誕生したので比較的若い火山です。八丈富士のすそ野の三根(みつね)や大賀郷(おおかごう)の平地は、八丈富士の噴火時の溶岩流によって作られ、古くからあった三原山と八丈富士が陸つながりになりました。八丈富士が最後に噴火したのは1606(慶長11)年のことで、それ以降噴火活動は休止しています。2002(平成14)年、八丈島で震度2の地震が生じましたが、この揺れは八丈富士の地下深部にマグマが貫入した結果だと考えられています。火山噴火予知連絡会では、活火山を「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」と定義しており、この定義では、三原山と八丈富士を含む八丈島は活火山になります。
八丈富士は、富士火山帯に属する玄武岩質の「成層火山(コニーデ)」です。成層火山とは、ほぼ同一の火口からの複数回の噴火により溶岩や噴出物が積み重なって形成された山を指します。同じく玄武岩でできた成層火山である富士山と八丈富士は、形も成り立ちもよく似ています。成層火山において、主火口以外の場所から噴火したものは「側火山(寄生火山)」と呼ばれます。富士山に宝永山・大室山・長尾山といった側火山があるように、八丈富士にも三根地区にある「神止山」(かんどやま)や、大賀郷地区にある「護神山」、八丈植物公園内の「徳里山」などの、小さな丘ほどの側火山が存在しています。