間近で水中写真も撮れます
■指定されている場所:小笠原村
小笠原諸島の近海では、一年を通じて野生のイルカに出会えます。小笠原は世界有数のイルカのウォッチングポイントです。クルーズ船に乗ると、ドルフィンスイムやウォッチングを楽しむことができます。小笠原は温暖な気候のため、年間を通じて泳ぐことができます。小笠原の沿岸で見ることができる主なイルカは、ミナミハンドウイルカとハシナガイルカの2種類です。小笠原の外洋域では、マダライルカ、ハンドウイルカがよく見られます。ちなみに、イルカ・クジラの中で体長4m以下のものが「イルカ」と呼ばれています(とはいえ、例外となるケースがあり、明確な境目がありません)。世界には約90種のイルカ・クジラがいますが、小笠原では約24種が確認されています。
ミナミハンドウイルカ
「ミナミハンドウイルカ」(Tursiops aduncus)は、マイルカ科の体長約2.5mのイルカです。体の色は、明灰色で腹側の方がより白く背が灰色です。ミナミハンドウイルカは好奇心が強く、水中で近寄って来て、一緒に泳ぐことができます(もっとも一緒に泳いでくれるかはイルカの気分次第です)。ミナミハンドウイルカとハシナガイルカはよく似ていますが、ミナミハンドウイルカのくちばしは丸みを帯びて短いのに対し、ハシナガイルカのくちばしは細く長いという違いがあります。
ミナミハンドウイルカの群れ
子どものミナミハンドウイルカの体の横側には、生まれてから1ヶ月ほどの間は「胎児線」と呼ばれる数本のシワが見られます。この胎児線があれば、生まれたばかりの赤ちゃんであることがわかります。小笠原ホエールウォッチング協会の調査から、胎児線のあるイルカは、5月から12月にかけてのみ見られることが分かっています。
小笠原村観光協会では、2005(平成17)年にイルカの生息環境の保全とツアー参加者の安全と快適性を確保するため、自主ルールを制定しました。「アプローチできる船の数」に関しては、「ひとつの群にアプローチできる船は、船の大小を問わず4隻までとする(ウォッチングのみの場合も含まれる)」、また「水中へのエントリーの数」に関しては、「2隻以上の船がひとつの群にバッティングした場合は、水中へのエントリー回数を1隻につき5回以下とする」と定められています。
ハシナガイルカの群れ
「ハシナガイルカ」(Stenella longirostris)は、マイルカ科の体長約2mほどのイルカで、ミナミハンドウイルカと同様に島の沿岸部で一年を通じて見ることができます。吻部(ふんぶ)、つまりくちばしの部分が長いため「嘴長(はしなが)」と呼ばれています。体色は背が灰黒色、側面が灰色、腹側が白色と三色に分かれています。ミナミハンドウイルカよりもやや色が暗く、体が小ぶりです。目からくちばしにかけて黒い線があります。英語ではSpinner Dolphin (スピナー・ドルフィン)といい、スピン、つまりきりもみジャンプをすることから名付けられました。きりもみジャンプに加え、前転、バク転などフィギュアスケーターさながらの演技を見せてくれることもあります。ハシナガイルカは船が走っていると、近寄ってきて船の舳先(へさき)を泳ぐことがあります。この行動のことを「バウライド」といいます(バウbow とは船の舳先のことです)。ハシナガイルカは群れで行動し、群れの頭数は20〜30頭、時には数百頭に達することもあります。父島海域では、早朝に沖合から岸に向かって移動してきて、日中は岸近くで休息や遊泳をし、夕方に沖合に移動するという行動パターンを取ります。
マダライルカの全身骨格標本
「マダライルカ」(Stenella attenuata)は、マイルカ科の体長約2mのイルカです。外洋性のイルカの中ではもっとも多く出会うことのできる種です。数百頭から数千頭の大群で泳いでいることがあります。体色は背が灰黒色、腹側が明るい灰色のツートンカラー。成熟個体には斑(まだら)の模様ができ、また吻端(ふんたん)、つまりくちばしの先が白くなります。マダライルカもジャンプすることで知られています。小笠原父島の小笠原ホエールウォッチング協会には、マダライルカの全身骨格とアカボウクジラの頭骨の標本が置かれています。どちらも水面で呼吸しやすいように鼻の孔が頭の上についていることが良くわかります。マダライルカの上あご(上顎骨)と下あご(下顎骨)には、小さな歯が多数並んでいます。