■指定されている場所:八丈町
フリージアは、南アフリカ原産のスイセンに似たアヤメ科フリージア属の球根植物。秋に球根を植えると芽を出して成長し、春に開花しますが、夏には葉や茎が枯れて球根を作り休眠します。営利栽培では、球根を高温処理や低温処理することにより様々な時期に開花させることができています。切り花や鉢物、花壇用と様々な用途に使われています。フリージア属には10数種の種(しゅ)があり、すべて南アフリカで発見されました。その中で広く栽培されているのは「フリージア・レフラクタ」(Freesia refracta)やピンク色の花の「フリージア・アームストロンギー」(Freesia armstrongii)、「フリージア・コリムボーサ」(Freesia corymbosa)などの種を改良した園芸品種です。現在、150を超える園芸品種が発表されています。
フリージアが日本に導入されたのは1887 (明治20)年でした。八丈島は冬期が温暖で生育が進むためフリージア栽培に適しており、島内には栽培業者が増えていきました。当初は球根の栽培が主流でしたが、現在では切り花生産がメインとなっています。日本におけるフリージアの生産高は近年減少していますが、高齢化や後継者問題による生産者の減少や、長期的な切り花単価の下落その他の要因が関係しています。
日本でフリージアが「アサギスイセン(浅黄水仙)」とも呼ばれるのは、日本で初期に流通したフリージアが黄色い花だったことにちなんでいます。また、花が甘い香りをもつことから、「コウセツラン(香雪蘭)」とも呼ばれています。春の開花時期には、八丈島全体がふんわりとフリージアの花の香りに包まれます。
フリージアは、デンマークの植物学者C. F. エクロンが南アフリカで植物を採集している時に発見しました。エクロンは彼の親友であり、かつ尊敬する医師であるF. H. T. フレーゼ(Freese)の名前を学名に付けています。フリージアは17世紀にヨーロッパに伝わり、19世紀以降ヨーロッパ各地やアメリカにおいて盛んに品種改良が進められました。1946 年にF. ラインベルトが育成した「ラインベルトゴールデンイエロー」(Rijnveld’s Golden Yellow)は、黄色い色が鮮やかで香りも高く、周年開花性があり病気にも強いため、長年にわたってフリージアを代表する園芸品種となってきました。日本でフリージアが黄色い花というイメージを持たれているのは、ラインベルトゴールデンイエローの印象が強いためです。フリージアの原種は白や黄色の花ですが、品種改良によって赤やピンク、オレンジ、紫などの様々な花色をもつ園芸品種が生み出されてきました。また花は次第に大きい品種のものが増え、中には八重の品種も作られました。1990(平成2)年頃に日本に導入された「アラジン」(Aladdin)は、現在主流となっている園芸品種ですが、ラインベルトゴールデンイエローよりも大輪の黄色い花を咲かせます。日本でも、島しょ農林水産総合センター八丈事業所(旧農業試験場八丈園芸技術センター)をはじめとして、各地の研究施設でフリージアの育種が行われています。
八丈島では、毎年3月後半から4月上旬にかけて、「八丈島フリージアまつり」が開催されます。第52回となる2018年度の「八丈島フリージアまつり」では、約35万本の色とりどりのフリージアが、八丈富士の裾野の広大な畑に咲き乱れました。「フリージアの無料つみとり体験」では、花を無料でつみとることができます。
また、フリージアの花を使って巨大な花絵の絨毯(じゅうたん)を作る「フリージア インフォラータ」が多目的ホール「おじゃれ」他、島内各地で制作されました。インフォラータとは、イタリアやスペインを中心に、「キリストの聖体の祝日」(毎年6月頃)に開催される「花祭り」のことです。聖体行列が進む参道に、花びらを敷き詰めて絵を描き、カラフルな花のカーペットをつくります。