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 地域資源紹介

奥多摩やまめ
奥多摩やまめ 写真提供 東京都農林水産振興財団 奥多摩さかな養殖センター

奥多摩やまめ

■指定されている場所:八王子市、青梅市、奥多摩町

「奥多摩やまめ」とは、1998(平成10)年に東京都水産試験場奥多摩分場(現、奥多摩さかな養殖センター)で先端技術を応用して開発された大型ヤマメのことです。

ヤマメとサクラマス

「ヤマメ」はその美しい姿やおいしさから「渓流の女王」「川魚の女王」と呼ばれています。ヤマメは体長が約20~30cmですが、全長が60cmにも達する大きな銀色の魚に「サクラマス」がいます。この2つは姿も名前も異なりますが、実はまったく同じ種類の魚です。学名はどちらもOncorhynchus masou(オンコリンクス マソウ)です。生まれた川で一生を過ごす「陸封型」の個体のことを「ヤマメ」といい、川から海に出て大きく成長し、やがて再び生まれ故郷の川に戻ってくる「降海型」の個体のことを「サクラマス」と区別しています。サクラマスは海に降(くだ)ると北上し、7~10 月は餌が豊富なオホーツク海で過ごします。サクラマスは海の小魚やイカなどを食べて身に脂が乗り、大きく育ちます。

サケ・マスの仲間には「陸封型」と「降海型」で名前が変わるものが多く、ヒメマス(陸封型)とベニザケ(降海型)、アマゴ(陸封型)とサツキマス(降海型)、エゾイワナ(陸封型)とアメマス(降海型)、ニジマス(陸封型)とスチールヘッド(降海型)などがあります。

北日本では、オスは降海型のサクラマスと陸封型のヤマメに分かれますが、メスはほとんどが降海型のサクラマスになります。しかも、北に棲むものほど降海型の個体の割合が高くなります。一方、関東より南では、ほとんどが川の上流部で一生を過ごす陸封型のヤマメとなります。


奥多摩やまめの特徴

奥多摩やまめ奥多摩やまめ
写真提供 東京都農林水産振興財団 奥多摩さかな養殖センター

通常のヤマメは、2年で産卵して死んでしまうため、体長は大きくても約30cm止まりですが、海に降ることなく2年以上も生き残って成長するのが「奥多摩やまめ」です。3年で体長約40cmで体重約1.5kg、4年で体長約50cm、体重約2kgと通常のヤマメの約2倍にまで成長します。普通のヤマメは刺身を取るには小さすぎるため、大きいものは塩焼きに、小型のものは唐揚げや酢漬けにして食されています。それに対して、大型の「奥多摩やまめ」は、サクラマスと同様に刺身ムニエルフライに利用されています。そして、奥多摩やまめは大きくなればなるほど味が良くなるといわれています。また、燻製や干物などの加工品にもなっています。多摩地域の特産品として、奥多摩町をはじめとする多摩地区の旅館や民宿、飲食店で食べることができます。


奥多摩やまめは3倍体

奥多摩やまめ手作りの検卵用ピンセット
撮影協力 東京都農林水産振興財団 奥多摩さかな養殖センター

人工受精させたヤマメの卵は、通常、水温約12℃のふ化槽でふ化させますが、奥多摩やまめは、受精後まもない卵を一度28℃のぬるま湯に15分間浸け、通常のふ化槽に戻します。普通のヤマメの細胞には、オス親由来の33本の染色体とメス親由来の33本の染色体、合わせて66本の染色体があり、2倍体と呼んでいます。ところが、ぬるま湯に浸けた卵では、99本の染色体を持つようになります。このようなヤマメは「3倍体」といい、成長しても性的に成熟せず、卵や精子を作れません。この方法は遺伝子組換えではなく、染色体操作です。植物の3倍体である、タネなしスイカやタネなしブドウに種子ができないのと似ています。成熟しないと、産卵期に卵巣や精巣に栄養が行かず、身がやせませんし、産卵後に死ぬこともないために寿命が延び、体長も30cm以上に成長できるのです。奥多摩さかな養殖センターでは、養殖業者への発眼卵や稚魚の配布を行なっています。


奥多摩やまめの外見

奥多摩やまめ推定5年目の奥多摩やまめ
撮影協力 東京都農林水産振興財団 奥多摩さかな養殖センター

ふ化後1〜2年の幼魚の頃は川で過ごし、体の側面に小判の形をした暗青色の斑紋(はんもん)が数個以上並んでいます。この模様のことをParr mark(パーマーク) 、もしくは「幼魚斑」といいます。ヤマメにはさらに黒い点もあります(近縁のアマゴには赤い斑点があります)。サクラマスが海に降る前には、このパーマークが消え体色が銀色になります。この変化のことを、「スモルト化」や「銀化(ぎんけ)」と呼んでいます。サクラマスのオスは成熟すると、ちょうどサケのオスのように鼻曲がりの形になります。奥多摩やまめは、全雌3倍体、つまりすべてメスなので、鼻曲がりにはなりません。奥多摩やまめのパーマークは、年と共に次第に薄くなっていき、体全体がサクラマスのように銀色になっていきます。サクラマスは産卵期には体が明るい桜色になり、これを「婚姻色(こんいんしょく)」といいます。サクラマスのオスは特に美しい鮮やかな桜色の婚姻色が出ます。サクラマスという名前もこの婚姻色に由来しています。奥多摩やまめでは、個体によって婚姻色の出方にはばらつきがあります。

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