全国で広く生産されている「みかん」は、気候や土地の違いにより甘みや酸味も変化します。
■指定されている場所: 武蔵村山市
里山の風景と豊かな自然環境が残る狭山丘陵。その南側の斜面では、武蔵村山市の特産品である「みかん」が栽培されています。武蔵村山市産のみかんは、温州みかんを改良して生まれた「宮川早生(みやがわわせ)」という品種。比較的収穫時期が早く、11月初旬からみかん狩りが楽しめます。また、甘みの中にほどよい酸味があり、濃厚な味わいを楽しめるのが特徴です。近年は、東京の狭山丘陵で収穫できるみかんという意味で「東京狭山みかん」というブランド名も付けられ、東京都内や近郊エリアで広く親しまれています。
武蔵村山市におけるみかん栽培は、1959(昭和34)年に始まりました。武蔵村山市の教員の一人が農業の専門知識を持っており、「水はけがよく、日当たりのいい狭山丘陵の南斜面がみかんの栽培に向いている」と農業を営む教え子に栽培をすすめたことがきっかけで、寒さに強い「宮川早生」が栽培されるようになったと言われています。当初、狭山丘陵で採れたみかんは、甘みが少ないものでしたが、長い時間をかけて改良を加え、現在のような甘みと酸味のバランスが取れた美味しいみかんが採れるようになりました。
武蔵村山市内のみかん園(小林農園)
みかんの代表的な産地として知られる和歌山県や愛媛県などの温暖な気候と違い、武蔵村山市の冬場は寒さが厳しく、寒波で苗木が枯れてしまわないよう防寒用のシートを巻くなど栽培には細心の注意が払われています。またみかんは雨水を吸い過ぎると味が薄くなるため、雨が多い時期には撥水シートを根元に敷くなどさまざまな工夫をしながら狭山丘陵の気候に合わせたみかん栽培が行われています。
シーズン中はみかん狩りが楽しめる
2020(令和2)年現在、武蔵村山市内では7つのみかん園が営まれており、11月上旬から12月初旬の収穫シーズンには、ほぼ全てのみかん園でみかん狩りを楽しむことができます。持ち帰る場合は別料金となりますが、園内で採れたみかんは食べ放題。採れたてのみずみずしいみかんを、その場で好きなだけ味わうことができます。遠方の産地まで行かずとも、東京都内でみかん狩りを楽しめるとあり、シーズン中には、地元の人はもちろん周辺地域や近県からもたくさんの人が訪れています。
温州みかんマーマレード(小林農園)
武蔵村山市産のみかんは、ジュースや羊羹などさまざまな形で活用されてきました。近年では、みかんを使ったジャム「温州みかんマーマレード」や、「みかん蜂蜜」も登場しています。武蔵村山市は、こうした加工品開発の費用の一部を補助する制度を設けているほか、市の公式ウェブサイトにみかん狩りの情報を掲載したり、パンフレットを作ったりするなど、武蔵村山市産みかんの魅力を伝えるためのPRにも努めています。