揚げたての「たたき揚げ」
■指定されている場所: 新島村
新島・式根島産魚のたたきは、島で穫れるトビウオやアオムロアジを用いた昔ながらの郷土料理です。やわらかな食感と味わいが特徴で、揚げ物や鍋物に最適です。たたきとは、味噌などの調味料や野菜を加えて練った魚のすり身のことを指します。
たたきに用いられる原料魚の標本(トビウオ、アオムロアジ、ムロアジ)
たたきに用いられるアオムロアジ(アオムロ)は、スズキ目アジ科の魚で、標準和名をクサヤモロ(Decapterus macarellus)といい、伊豆諸島の名産であるくさやの原料としても用いられている魚です。アオムロアジは8 ~ 12 月の時期にたくさん穫れるため、皮や骨を取り除く加工をしたものを保存して他の時期に用います。近年、伊豆諸島近海でのアオムロアジの水揚げが激減しているため、他の地方から原料となる魚の買い付けも行われています。他にも、たたきに用いる魚には、トビウオやムロアジ、そして時にはキンメダイが用いられることもあり、それぞれ独特の味になります。
ミキサーで練る
かつては、新島・式根島の各家庭でたたきを作っていたため、家庭ごとに味に個性がありました。しかし、その作業に骨が折れるということもあり、徐々に家庭では作られなくなってきました。一般的な魚のすり身は、小骨も丸ごとすり身にされますが、新島・式根島産魚のたたきの場合、魚を三枚に下ろした後に、身の部分のみをすり身の原料に用いています。調味料や野菜の配合は店によって特色があります。加える調味料(味噌、砂糖など)の量は、その日の魚の状態で調整しています。
パッケージに詰める作業
調理中のたたき揚げ
生のすりみであるたたきを油で揚げたものがたたき揚げです。薩摩揚げに似ていますが、柔らかく、ふわっとした食感が美味しい一品です。生のすり身を家庭で揚げる場合、まず、たたきをしゃもじでよく練ります。弱火の油に、しゃもじにのせた生のたたきを、はしで平らにしながら落とします。ふくらし粉を加えられているため、揚げている時にはぷくっーと膨らみます。膨らんできたらひっくり返してこがさないようにし、両面がきつね色になるまで5分ほど揚げて、膨らんだたたきが少ししぼんできた頃に、取り出し油を切ります。
鍋料理にすり身を用いた例
たたきは、おでんや鍋物に最適です。食べる少し前に、沸騰した汁の中にすり身を大さじですくって落とし、フワッとして浮いてきたら、食べ頃となります。また、みそ汁に入れると、たたき汁(つみれ汁)になります。