東京狭山茶
■指定されている場所: 東大和市、武蔵村山市、瑞穂町
「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」と唄われる茶摘み歌にあるように、狭山茶は日本三大銘茶の一つと言われます。狭山茶のうち東京で生産されたものを東京狭山茶と呼んでいます。
茶葉の拡大写真
狭山茶の歴史は諸説ありますが、江戸時代中頃には現在の青梅市、瑞穂町、武蔵村山市、東大和市、東村山市の周辺で大々的に生産されるようになります。明治に入るとお茶は日本経済を支える重要な輸出品の一つでした。1964(昭和39)年頃には埼玉県産のものと区別するため、東京都産のものを東京狭山茶と呼ぶようになりました。近年では、東京狭山茶の産地としては瑞穂町がその生産量の多くを占めています。東京狭山茶の年間生産高は、一番茶で約80tにも達しています。
東京狭山茶の茶畑
東京の多摩地区はお茶の産地の中では北に位置し、お茶を生産するにはやや寒い地域といえます。また、内陸にあるため乾燥した風が吹きやすい場所です。こうした環境は、葉を厚く重くし(厚みがあるとはいえ葉は柔らかい)、タンニンを多く含む茶葉を生み出します。この茶葉でいれたお茶は、味は濃厚でコクがあり、渋さの中にも甘い味わいとなります。見た目の色は濃いですが、二煎目以降もその味を楽しむことができるのが、東京狭山茶の特徴です。
明るい黄緑色の葉が新芽
摘み取った茶葉は、鮮度を保つために湿度の高い空気をあてて発酵させないようにします。次いで、味を良くし、茶葉の色を保たせるために蒸気で蒸します(蒸熱)。この工程の具合によって「味」、「香り」、「水色(すいしょく・湯飲みに注がれたお茶の色のこと)」が決まります。一般的に、蒸す時間が長いほどコクを増し、水色が濃くなります。その後、熱風を送りつつ、打つように茶葉を揉んで、茶葉を柔らかくします(粗揉・そじう)。続いて、茶葉をひと塊にし、加熱せず圧力を加えて揉みます(揉捻・じゅうねん)。そして、整形しやすいように熱風を送りながら水分を飛ばし(中揉・ちゅうじゅう)、緑茶独特の細い形に整えるため、一定方向にだけ揉みます(精揉・せいじゅう)。加えて、熱風で水分を5%程度にまで下がるように乾燥させます。さらに仕上げ工程には、分別・火入れ・ブレンドがあります。
東京狭山茶の煎茶
春の新芽の時期に収穫する一番茶が最も品質が良いとされています。一般的に、一番茶の後(初夏)の時期に収穫する二番茶が、次に良い品質のものと言われています。東京狭山茶は急須で飲む日本茶のみならず、多岐にわたる商品に活用されています。例えば、東京狭山茶の葉を使った紅茶「東京紅茶」や、東京ほうじ茶パウダー、東京狭山茶パウダーといったパウダータイプのものが登場しています。近年では、ペットボトル用のお茶も需要が高まっています。また、東京狭山茶を用いたチョコレートやケーキ、せんべいなどの新商品の開発も行われています。
画像提供:藤本園